マンション修繕 住民になりすまして受注誘導
マンション大規模修繕工事を巡る不正がおこっている。
工事会社の関係者が住人になりすまして、工事の受注を誘導する悪質な手口が判明した。
何が起きたのか?
2025年5~6月、首都圏の複数マンションにおいて、施工会社の社員が住民になりすまして理事会や修繕委員会に入り込む事案が相次いで発覚。
神奈川県警は、住居侵入容疑で2人を逮捕(のち処分保留で釈放、任意捜査継続)。
会合で“委員会の進め方”を指南し、特定のコンサルや業者の選定に有利になる条件を提案したと報じられている。
現場で「あなた誰ですか」と問い質されて、逃走する映像も公開された。
背景には、大規模修繕が12~15年ごとに実施され、費用が数千万円~数億円規模(大規模・高層では十数億円規模も)に上る“巨額市場”となっていることがある。
市場規模は今後拡大見込みで、2030年には約8,200億円との推計もある。
こうした利害が不正な受注誘導を生みやすい土壌になっている。
2025年3~4月には、公正取引委員会が首都圏の修繕工事会社約20~30社に独禁法違反(受注調整=談合)の疑いで相次いで立入検査。
業界大手も対象となり、業界全体の不透明さが問題視されている。
悪質な手口の特徴
接触の足がかり作り
「住民アンケート」「インタビュー謝礼(例:ギフト券)」などを装って住民に接近。
居住情報や修繕時期を把握し、委員会への“代理参加”や助言役の持ちかけへつなげる。
委員会・理事会への潜入
住民や家族を名乗って会合に同席。
議事運営や募集要件(RFP)に口を出し、特定のコンサルや工事会社が有利になる条件を埋め込み、相見積もりを形骸化させる。
利害関係の隠匿
コンサルが選定に関与しつつ、特定業者と裏で結びつくリベートといった構図が指摘されている。
管理組合や住民ができる実務対策
身元確認の徹底
理事・監事・修繕委員の就任時に、顔写真付き公的証明の提示。
代理人や家族就任時も同様にして、来訪者や傍聴者も受付名簿+身分確認を行う。
ベンダー接触ルール
業者やコンサルからの個別接触の記録義務化(日時・担当・用件)と理事会一元管理。
個別の“助言役”や“代理参加”の申出は原則禁止する。
仕様作成と選定の分離
設計(第三者)と施工を分離し、利益相反の有無を書面申告させる。
選定基準・評価表を事前に公開し、価格だけでなく技術点も採点。
入札・見積りは最低3者以上、質疑応答は全社へ同報する。
情報統制と透明化
修繕積立金や調査報告の詳細は必要者に限定配布する(漏えい防止)。
一方で、意思決定は議事録・採点表を全区分所有者へ公開して透明性を担保する。
外部の目線を入れる
弁護士・マンション管理士等の第三者アドバイザーを活用(利益相反のない者)。
入札監視役や開札立会を明文化しておく。
疑わしいときはどうする?
会合の出席者確認・名簿整備(身元確認書面の保全)
議事録・メール・配布資料を保存(誰が何を提案したか)
理事会で臨時協議→入札停止・再点検
必要に応じて警察(住居侵入・詐欺未遂等)や公取委(談合情報)、所管の自治体・国交省窓口へ相談。
この問題は「一部の悪質事業者」の行為によって行われているが、金額規模が大きいだけに統治(ガバナンス)を仕組みで固めるのが最強の予防策となる。
参考資料 日本経済新聞 狙われるマンション修繕、住民偽装し受注誘導 管理規約見直しで対策
