大義を思う者は、たとへ首をはねらるる期(とき)までも命を大切にして、何卒(なにとぞ)本意を達せんと思う
石田三成(いしだ みつなり)が徳川家康との戦いに敗れ、捕縛されていたときに言った言葉です。
文章中の「大義」とは、恩義ある豊臣秀吉(とよとみ ひでよし)の後継者である豊臣秀頼(とよとみ ひでより)や豊臣政権を守り支えることです。
江戸中期の逸話や見聞集「明良洪範(めいりょうこうはん)」に記載されています。
石田三成 東京大学史料編纂所 所蔵
石田三成が京都の町を引廻されている最中に、水が飲みたくなったので警護の者に伝えたところ、水がなかったので干柿を差出された。
三成は「痰(たん)の毒であるから食べない」と言って断った。
※「痰(たん)の毒」
昔から東洋医学では「柿は腹を冷やす」と言われています。
そのため、柿を食べると下痢や便秘をすることがあるそうです。
「間もなく首を刎(は)ねられる人が毒を断つのはおかしい」と警護の者に笑われた。
しかし、三成は
「そなた達小物には分からないだろうが、大義を思う者は首をはねられる瞬間まで命を大事にするものだ。それは何とかして本望を達したいと思うからである」と答えた。
干柿の逸話から、最期の最期まであきらめない石田三成の生真面目な性格が伝わってくるようです。
石田三成の好物は、柿だったらしいです。
大名であった横浜一庵(よこはま いちあん)から、柿100個が送られた際の礼状に「拙者好物御存知候(せっしゃこうぶつごぞんじそうろう)」と書いています。
他にも、三成に柿を贈答したことが記録されています。
この干柿の逸話と柿が好物であったことは、何か関連があるのかもしれません。